シスタープリンセス・ショートショートストーリー
早すぎて遅すぎた初雪

 「ふぅ・・・」
 授業が終わった放課後、私は何かをするでもなく教室でため息をついた。
 「・・・お兄様」
 何かをする気にもなれず、思い浮かぶ事はお兄様の事だけ。
 「昨日は恋人だったのに、今日は兄妹か・・・」
 兄妹の関係はいつも通りの事なんだけど、やっぱり気が抜けちゃうなぁ・・・


 お兄様は毎年誕生日の日にデートをしてくれる。今年もすごく楽しみにしていた。
 そして誕生日は恋人同士になり、朝から晩まで兄を独り占めできとても満足していた。
 それに「あきらめなければいつかは」という希望も見えてきた。
 今年の誕生日は間違いなく最高の誕生日だった。
 しかし・・・

 「はぁ・・・」
 楽しみにしてた分だけ反動か、終わった後の寂しさが今の咲耶を支配していた。

 「お兄様、会いたい・・・」

 今日は平日だからお兄様も学校に行っていて今はもちろん会えない。
 でも、咲耶にとっては今である。

 教室の窓から空を見上げれば曇り空、今にも降り出しそうである。
 天気予報では雪が降るかもしれないと言っていた。
 そのニュースを見たクラスメイトは、「もうちょっと遅ければホワイトクリスマスだったのにね」
 「今日ふったら早すぎるよね」と残念そうにしていた。
 確かに咲耶もそう思った。でもそれ以上に昨日ふってほしかったとも思った。


 「いけないいけない、なんだか暗くなっちゃってるわ。」
 咲耶は自分を叱咤する。
 「こういうときはお買い物に限るわよね!」
 そうと決まれば善は急げと、咲耶はカバンをもちクラスを後にした。
 そして駅前まで買い物に行くことにした。

 「ジュエリーショップもブティックもいいわね」
 そう思いながら駅の方まで歩いてきた咲耶だが、店の中にはいることは無かった。
 「そうよね、昨日いっぱいまわっちゃったものね・・・」
 そう、咲耶は昨日のデートでお兄様につきあってもらいながらいっぱい見て回っていた。
 「・・・ふぅ」
 今日何度めかのため息が出ていた。


 いつのまにか雨が降り始めてきた。
 でも咲耶は気にならないのか、そのまま歩いていた。


 気がついたら昨日の想い出のクリスマスツリーの前に来ていた。
 「おもちゃの指輪だけど、昨日お兄様はここで私に・・・」
 私は薬指にはめたおもちゃの指輪を見つめていた。
 お兄様にねだって買ってもらったおもちゃの指輪。
 私は迷わず薬指にはめた。あのときのお兄様は笑ってるだけだった。

 「わぁ、雪だよ!」
 近くを歩いてる子供の声が聞こえた。 私は空を見上げた。
 いつの間にか雨は雪になっていた。

 視界一杯に雪が舞い落ちてくる。
 見上げたままずっと空を見つめ続けていた、なんだか下を向いたら涙がでそうだった。


 「咲耶じゃないか、こんな所でどうしたんだ?」
 その声に振り向くと、そこにはお兄様が立っていた。
 いつものような優しい笑顔で、その笑顔が私を安心させてくれる。
 「傘も差さないでどうしたんだ?」
 「ううん、なんでもないの」
 私はあわててそう答えた。
 「そうか?」
 「そうよ、お兄様。」
 そういって私はお兄様の腕に自分の腕組む。もしかして泣いてたかもしれない顔を見せたくなかったから。
 そのときふれあった手にお兄様はびっくりして「冷たいじゃないか、だいじょうぶか?」って聞いてくれた。
 お兄様ってやっぱり優しい。
 お兄様は一度私の腕をほどくとコートを脱ぎだした。
 「お兄様、何をするの?」
 「咲耶の身体が冷えてたからな、コートを着させようとおもって」
 「だめよっ!」
 私はそう言って断った。
 「お兄様こそ風邪ひいちゃうわ。熱出したらどうするの?」
 「それなら咲耶も風邪ひいちゃうだろう?」
 「私はいいの、それよりもお兄様の方が大事なの」
 「俺は咲耶の方が大事だよ!」
 「お兄様が大事!」
 「咲耶が大事!」
 「お兄様!!」
 「咲耶!!」

 「・・・」
 「・・・」
 「くす・・・」
 「ははは・・・」
 なんだかおかしくなって笑っちゃった。私もお兄様も相手の方が大事だって譲らないのだもの。
 「お兄様ったら頑固なんだから」
 「咲耶もだろう?」
 なんだかさっきまで悩んでいたのが嘘みたいにすっきりしちゃった。
 やっぱりお兄様って素敵よね。いて欲しいときにいてくれる、癒して欲しい時に癒してくれる。
 ますます離れられなくなっちゃう、くす、もちろん離れる気なんてないけどね。

 「このままだと咲耶が風邪ひいちゃうしな・・・」
 「お兄様ったら、まだ考えてるの?」
 「・・・よし、特別に」
 「え? きゃっ」
 私はお兄様に肩を抱き寄せられてコートの中にすっぽり入っちゃいました。
 「これなら咲耶も温かいし俺も温かいよな」
 「う、うん・・・」
 「ちょっときついけど我慢してくれ」
 「・・・うん」

 確かにコートの中に入るには私は大きすぎるし、前のボタンは留められないから冷たい風ははいってくるけど
 それでも私はお兄様に抱かれてとても温かかったです。

 「そういえば、初雪なんだってな」
 「うん」
 「初雪、1日遅かったな」

 私、嬉しくなって涙がでそうだった。
 お兄様は初雪を早くは無く遅く感じてくれていた、私と一緒に。

 お兄様と私はつながっているのがわかる。兄妹や家族という絆以上の物で・・・
 「お兄様」
 「なんだい?」
 「・・・大好きよ」

<終わり>


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 あとがき
 実はこのお話は以前書いた連載物のお話の一つを書き直したものです。
 ですので、このお話の前に誕生日のお話があって、その後にクリスマスのお話も
 ありました。今は両方ともお蔵入りです。

 誕生日とクリスマスの両方を兼ねたまさきちさんの絵を、誕生日以降クリスマス以前の
 初雪のお話にぴったしだったので、お蔵入りしてたお話をちょっと書き直して
 まさきちさんに贈りました。
 このお話を書いた時、この日に本当に初雪が降りました。ちょっとだけでしたが
 その初雪を見てこのお話を書きました。

 他のお蔵入りしたお話がお蔵から出てこれるかは、読者の反応とまさきちさんの絵次第
 ということで(^^;

 2003.12.22 早坂 充


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